SNS

楽しいはずのSNSが、見るたびに私を削っていた

匿名・20代

タイムラインを開くのが、いつからか少しだけ怖くなっていた。楽しいはずの場所なのに、ある友達の投稿が目に入るたびに胸の奥がきゅっとなる。これは、そんな気持ちと折り合いをつけるまでの、私の話です。

楽しいはずだった、あの頃のタイムライン

SNSは、もともと私にとって息抜きの場所だった。おいしかったごはんの写真を載せたり、友達の近況にいいねを押したり。会えない時間も、ゆるくつながっていられるのがうれしかった。

その友達とも、最初は楽しくやり取りしていた。学生時代からの付き合いで、共通の知り合いも多い。だから「なんとなく合わないな」と感じ始めても、それを言葉にするのは難しかった。

「すごいね」と返しながら、少しずつ削れていく

違和感がはっきりしてきたのは、いくつかの小さな出来事が重なってからだった。

ある日、彼女は高級店のタグをつけて「忙しすぎて記念日のお店、予約する暇もなかったのに彼が気をきかせてくれた」と投稿していた。困っているふうの文章なのに、写真はきらきらしている。私は「すごいね」とコメントしながら、なぜか自分の生活が急にくすんで見えた。

別のときは、もっとわかりにくかった。私が資格試験に落ちたことを軽く話した数日後、彼女のストーリーに「ちゃんと準備すれば受かる試験で落ちる人って、何が足りないんだろうね」という一文が流れてきた。名指しではない。考えすぎかもしれない。でも、ちょうど私に刺さる角度で言葉が置かれていた。

極めつけは、グループのやり取りだった。私のメッセージにはなかなか反応がないのに、他の子の投稿には秒で既読といいねがつく。私の投稿だけ、いつも静かだった。一つひとつは小さい。けれど積み重なると、「私は軽く扱われている」という感覚が確かに残った。

見るたびに、自分が小さくなっていく

気づけば私は、アプリを開くたびに彼女の動向を探していた。今日は何を載せているか、私の投稿に反応はあったか。確かめては落ち込み、落ち込んではまた開く。

いちばん苦しかったのは、夜だった。一日の終わりに疲れた頭で彼女のきらきらした報告を浴びると、そのまま比較の気持ちを布団まで持ち込んでしまう。眠る前なのに、心はちっとも休まらない。SNSは楽しむための道具だったはずなのに、いつの間にか私の自己評価を採点する場所になっていた。

ある夜、気づいたこと

そんなある夜、スマホを置いてふと思った。私はこの数週間、自分の好きなことより「彼女がどう出てくるか」ばかり考えている。彼女の編集された予告編みたいな投稿を、自分の地味な現実と並べて、勝手に負けた気になっている。

そして気づいた。彼女が悪い人だと決めつけたいわけじゃない。ただ、この人の投稿は、今の私の心をすり減らしている。それは事実だ。だったら、相手を変えようとするより、私の目に入る情報を私が選び直せばいい。

そういえば、と思い出したことがあった。前に別の友達と話していたとき、「あの子の投稿、なんか見るとモヤッとするんだよね」と、相手もぽつりと同じことを言っていたのだ。もやもやしていたのは、私だけじゃなかった。その何気ない一言が、自分の感じ方をいちいち責めなくていいんだと、背中をそっと押してくれた気がした。

自分を守る、小さな一歩

私がまずやったのは、彼女の投稿を「ミュート」することだった。フォローは外さない。通知も来ない。ただ、タイムラインに流れてこなくなるだけ。喧嘩でも絶縁でもない、とても静かな一手だった。

次に、自分の投稿は親しい人にだけ見せる設定にした。私の近況を、誰かの採点材料にされない。それだけで肩の力が抜けた。

見る習慣も変えた。アプリを開くのは朝と夜の一回ずつと決めて、寝る前は見ない。スマホを少し遠くに置いて眠る。そして何より、彼女の言葉に張り合うのをやめた。当てこすりらしき投稿を見ても、読み解こうとしない。スッと通り過ぎる。無反応でいることが、いちばん静かで強い守りだった。どれも一度で身についたわけではなくて、また夜中に開いて落ち込んだ日もあった。そのたびに、自分に合うやり方へ少しずつ手直ししていった。

心が軽くなった今

数週間がたって、私のタイムラインはずいぶん穏やかになった。彼女との関係を切ったわけではない。リアルで会えば、今までどおり笑って話す。ただ、画面の向こうの相手に、自分の心を明け渡すのをやめただけだ。

いいねの数は私の魅力の点数ではないし、既読がつくつかないも私の価値とは関係ない。当たり前のことを、ようやく体で思い出せた。今は、おいしかったごはんの写真をまた気楽に載せられている。SNSは、私のための場所に戻ってきた。

もし今、誰かの投稿を見るたびにざわつくなら、その感覚は気のせいではないかもしれない。何を見て、何に心を動かすかを決めるのは、いつだって自分自身だ。画面の中の明るさに合わせて、自分の毎日のほうまで採点しなくていい。そのことを思い出せたら、タイムラインはきっと、また少しやさしい場所に戻ってくる。

※ プライバシーに配慮し、内容を構成しています。

広告
次の一歩 あの人との関係を、診断で確かめる 診断する